EM半年の振り返り、プレイヤー脳を捨てきれていない自分へ

これはKyashアドベントカレンダー2025の3日目の記事です。
昨日は 田中さん[入社エントリー]Kyashに入社しました でした。

はじめに

こんにちは、KyashのモバイルチームでEMをやっている加藤(@nitakan)です。
この記事では、EMになって5ヶ月くらい経ったけどプレイヤー脳を捨てきれていない自分への振り返りです。

元々KyashのモバイルチームEMは @_rmakiyama が担当していましたが、彼が育休を取得することになるのと、自分のキャリア的にも挑戦したらどうかということで任せてもらうことになりました。

今のKyashは所謂マトリクス型の組織で、縦に事業部、横にエンジニアリング部とモバイルチームがあります。

今は、横軸では「モバイルチームのEM」でありつつ、縦軸では「ウォレット事業部のメンバー」という立ち位置で働いています。

この記事でいう「プレイヤー脳」とはなにか

タイトルの「プレイヤー脳」とは、コードを書いているかどうかだけの話ではないです。
EM になる前は事業部チームで開発リードのような動きをしていました。

  • PdM と要件・仕様の壁打ちをする
  • 仕様の背景や制約を一番理解している状態でいる
  • プロジェクトが止まりそうなところを全部拾って前に進める

EM になってからも、その延長線上で動いてしまっていることに気が付きました。

  • PdM と要件の壁打ちを自分が受ける
  • テスト観点を自分で作る
  • プロジェクトが前に進むように、雑務を自分が拾う

開発作業は任せていてコーディングはあんまりしていないのに、「不確実性の高いが誰かがやらないといけない部分」を自分が前線で抱え続けている状態です。 この「自分が前線で動かないといけない」といった考えをプレイヤー脳と表現しています。

EM になって一番きつかったのは「チーム目標を 4 ヶ月決められなかったこと」

2025年7月に EM になって、一番きつかったのは モバイルチームとしての目標をなかなか決められなかったことでした。
このチームは何をするチームで、何ができるようにならないといけないのかというものを定義できないまま、日々を過ごしてしまっていました。

Kyashは7月が下期の開始で、本来なら就任後すぐに下期の目標を決める必要がありました。
でも実際に目標を決められたのは10月の終わりで、下期開始から4ヶ月遅れでした。

理由を振り返ると、こんなものかなと思います。

  • EMとしてどう動き始めたらよいのかわからなかった
  • モバイルチームとエンジニアリング部の目標をどう紐づけるか答えがなかった
  • 「モバイルチーム」が何をするチームなのかが自分の中で言語化できていなかった

結果として、メンバーはそれぞれ事業部に貢献はしているけれど、モバイルチームとして「どこに向かっているのか」というのが曖昧なまま4ヶ月を過ごしたことになります。 モバイルメンバーは皆優秀で自発的に動けるメンバーばかりなので、その点に甘えていた自覚があります。 EMとしては良くない動き方であることはわかっていて、無為に過ごしてしまった4ヶ月はこのタイミングで残しておきたい反省点です。

カレンダーを数字でみたら、「不確実性を抱え込む時間」がやたら多かった

自分の時間の使い方を把握するために、11 月の 4 週間分の予定にラベルを付けて集計してみました。

4週を平均すると週あたりの合計は35\~45時間程度(祝日が多かったからね)。
内訳的にはざっくり平均でこうなりました。

  • 事業部 MTG:週 10〜15 時間(およそ 30%前後)
  • 1on1・モバイルチームマネジメント:週 3 時間弱(7%前後)
  • エンジニアチーム MTG:週 2〜4 時間(7〜10%)
  • 全社 MTG:週 1.5〜2 時間(4〜5%)
  • 作業:ほぼゼロに近い
  • 残り(ラベルが付いていない時間):週 15〜20 時間(40%強)

※これは11/3週目

リモートワークなので、カレンダーに登録されているのはほぼMTGになっています。
「残り」の時間は、何もしていないのではなく、どちらかというと作業のような

  • 要件からの検討・整理
  • テスト観点の洗い出し
  • プロジェクトが進むように雑多なタスクを処理する
  • 次のプロジェクトのための調査
  • 問い合わせ対応

といったことに使っていて、事業部に関連したことが大半だったように思います。

これらはどれも「不確実でグレーな部分を、自分が前線で処理し続ける仕事」です。
「プレイヤー脳」のまま、EMになっているというのが数字からわかりました。

EMをやる前と変わってなくね?と感じたこと

ある案件で、PdMとの要件調整や経営層との検討を自分がやっていて、「開発のオーナーは◯◯さんです」と言いつつ、外から見ると完全に「加藤がやっている」になっていたことがありました。
後から振り返ると、そのときメンバーに残っているのは「言われたタスクをこなした記憶」だけで、不確実な仕様をどう整理したか、ステークホルダーとどう握ったか、といった部分は全部自分のところで止まっていました。
このときに、「EMというより、プレイヤーの延長線上で全部抱えているだけだな」とかなり強く感じました。

なぜ「不確実性を抱え込む EM」はチームにとってマイナスか

不確実性があるプロジェクトを自分が推進して進めていく事自体は良いことではありますし、短期的には機能すると思います。

  • プロジェクトが止まりにくい
  • 関係者のストレスが減る
  • PdM から見ると「話が早い人」になる

ただ、やっていることをもう少しバラしてみると、

  • PdM と「自分との間」で要件・仕様が完結する
  • 「自分が」テスト観点まで整理してからタスクに落とす
  • メンバーは「不確実性が減らされたタスク」を担当してもらう

といったことをやっているのですね。
こういったことをしてしまうと、長期的にはデメリットになるなと感じています。

事業部チームへのマイナス

  • メンバーが「要件の背景・トレードオフ・グレーな判断」に触れる機会が減る
  • 不確実性をさばく経験が自分にだけ集中する
  • 「案件のフロントマンになれる人」がチームに育たない
  • 結果として、自分が詰まった瞬間にチームも詰まる構造になる

要するに属人化の完成で、メンバーが育たない組織になってしまうことになります。

モバイルチームへのマイナス

EMの打診を受けたときに、このようなミッションをもらいました。

にも関わらず、上記のような状態はこのミッションと真逆の動きをしていることになります。

  • 不確実な要件・テスト観点・調整の知見が、モバイルチームに横展開されない
  • メンバーは要件定義やテスト設計、ステークホルダー調整といった業務にふれる機会が少ない
  • 事業部側のタスクに手を取られてしまって本来の役割であるモバイルチームを引っ張ることができていない

「個人で成果を出せている」との評価があるのに、そこにしがみついているような状態になっていて、本来のチームを強くするミッションを進めていないのが現状です。

遅れてしまったけど、「モバイルチームの意義と目標」は決めた

そんな中でも、進められたことがあります。
それは、モバイルチームの存在意義と、少し長い時間軸での目標を言葉にできたことです。

  • Kyashの中でモバイルチームは何をするチームなのか
  • 誰に、どんな価値をどんな形で届けるのか
  • そのために中期的、短期的に何を積み上げるのか

これを4ヶ月も遅れてしまいましたが、モバイルチームのメンバーと一緒に決めることができました。
メンバーからは「皆が感じている課題感が可視化されてよかった」や「いい着地ができたと思います」といった声をもらえたのでやってよかったと思いました。

ただ、これはやっとスタートラインに立ったようなもので、本来ならもっと早くやるべきだったことでした。

EM として 2 点 / 10 点

色々な記事や本がある中で、EMとしてはまだまだ「やるべきこと」ができていない、理解できていないです。
その最中でも最低限チームの方向性を決めることができたことは加点したいなと思ってこの点数にしました。

もちろんチームや状況によってやるべきことは変わっていくとは思いますが、まだまだ伸びしろがあるという点数としています。

これから半年でやること

自分はマトリクス型組織の中で、「事業部のメンバー」と「モバイルチームのEM」として動くことがありますが、これから半年は「モバイルチームを強くする=モバイルチームの力で事業にインパクトを与える」ことに軸足を置くつもりです。

やることは3つです。

1. 事業部側の不確実性を事業部チームに開放する

まず、事業部側での働き方を変えます。

  • PdMと自分で考えるという構図をやめ、チームで話して考えるようにする
  • 不確実なものを自分で決めず、不確実なままチームで議論する
  • 要件整理をチームメンバーができるように任せる
  • 自分自身の役割を限定的にする

つまり、自分がやっていたことを「チームができる」状態に変えていこうと思います。
これは自分が使える時間を解放することも意味します。

2.事業部で得たナレッジをモバイルチームの共通資産にする

モバイルチーム目線では、ここがあまりできていないことが弱点だなと思っています。

  • 要件をチームで決める方法
  • 要件とテスト観点の作成
  • 開発のTips
  • 他部署との関わり方

といったナレッジをモバイルチームでの共通資産にしていく。

3.「モバイルチームを強く」する方法を考える時間を作る

これは結構ざっくりとしたものですが、自分の時間の配分を、タスクではなく「役割」ベースで設計し直すのが必要と感じています。

今は「その場で発生したタスク」に時間を取られがちなので、もう少し 意図的に役割ベースで時間をブロックする必要があると感じています。 現状ほぼ無い「モバイルチームマネジメント」の時間を増やし、チームの成果やメンバーの成長というところに時間を割けるようにしていきます。

例えば、週に2時間は予定をブロックしておき、EMとしてチームについて考える時間を確保する、といったことをするつもりです。

終わりに

EMになってからの数カ月を振り返ると、役割名だけ変わって、あんまり中身は変わっていなかったなとはっきり認識する時間だったなと思います。
今までやってきていたのは、「個人としては成果を出しているけど、チームとして力を出せていない」といった動き方でした。

この記事は「EMをうまくやっている話」ではなく、「EMになったけどまだプレイヤー脳のままだと気づいた話」のログです。
半年後にこれを読み直したときに、「あの頃まだこんなことで悩んでたのか」と思えるのが一番の理想です。

もしこの記事を読んでいる人の中に、「プレイヤーから EM っぽい何かになってモヤモヤしている人」がいたら、自分のカレンダーを色分けして現実を見るのが良いかもしれません。 自分がどこでプレイヤー脳を手放せていないのかは、だいたいそれで見えます。

あとは、ここに書いたことを「そういえば昔こんなこと考えてたな」で済ませるのか、実際に行動を変えていくのかだけです。
次の一年で、「プレイヤーとしてどうこう」ではなく、「モバイルチームとしてちゃんと強くなった」と言える側に寄れているかどうかを、またどこかで確認しようと思います。

仲間を募集しています!

ここまで読んで、「未完成なチームを一緒に強いチームにしていくのもおもしろそうだな」と思った方がいたら、ぜひお話ししましょう!

Kyashでは、サーバーサイドエンジニア・SREを募集しています。
現時点で「完成された組織」ではないですが、だからこそ仕組みづくりやチームづくりから関わりたい人には合うと思います。
数少ないFintechとして、決済の開発やユーザー体験を追求してみませんか。

興味があれば、Kyashの採用ページ または、XのDMにお気軽にご連絡ください!

Kyashに入社しました

この記事はKyashアドベントカレンダー2025の2日目の記事です! 昨日は konifarさんKyashに入社して8年くらい経ちましたでした!

はじめに(自己紹介)

2025年6月に株式会社Kyashに入社した田中公一朗(@tkmusic1976)です。

私は現在、クレジットカードでの決済処理(オーソリ、クリアリングなど)を専門的に担当するエンジニアリング部Paymentチームでバックエンドエンジニアとして働いています。KyashはVisaと直接接続しており、決済処理の要を担うのが私たちのチームの役割です。

Kyashへの参画を決めた理由

Kyashへの参画を決めた理由は大きく3つあります。

1つ目は「お金にまつわる体験の向上」と「金融サービスに求められる正確性・確実性」の両立を技術で成し遂げるということの魅力です。

決済・入金処理は複数のシステム連携の上に成り立ち、極めて複雑です。その上で、正確さ、そして24時間365日稼働が求められるという難易度の高い課題に、一人のエンジニアとして向き合いたいと強く思いました。

Kyashは創業以来、先進的な機能でお金にまつわる体験の向上を成し遂げてきました。競合がひしめく状況下で、いかにこの挑戦を高いレベルで継続できるか、というチャレンジに大きな魅力を感じたのが理由の一つです。

2つ目は社員の皆さんの情熱です。CEO鷹取さん、COO鳥越さんを始め、皆さんそれぞれが熱い想いを持って仕事をしていることが面談・面接を通して伝わってきました。そのような方々と一緒に働きたいと思いました。

3つ目は、かつての仲間をサポートしたいという想いです。前々職時代に自分を支えてくれていた元部下がKyashで奮闘しており、今度は自分が部下として彼をサポートしたいと思ったのも大きな理由です。

入社前のキャッチアップ

私はこれまで20年以上システム開発に携わってきましたが、そのほとんどは勤怠管理システムの開発や畜産農家向けサービスの開発で、決済領域については初めての挑戦でした。 また、KyashのバックエンドはGo言語で実装されていますが、私はGo言語での実務経験もほぼありませんでした。

そのため入社前に以下の書籍を通じて予習をしました。

決済分野

図解即戦力 キャッシュレス決済がこれ1冊でしっかりわかる教科書

キャッシュレス決済ビジネスハンドブック

決済システムのすべて

カード決済業務のすべて: ペイメントサービスの仕組みとルール

決済サービスとキャッシュレス社会の本質

決済インフラ大全〔2030年版〕―新型スマホ決済から新決済リスク、金融業態改革、次世代決済まで

キャッシュレス決済に関する業界の状況やカード決済に関係する登場人物やそれぞれの関係を把握するのにこれらは役に立ちました。 ただ、実際の業務で求められたのは、VisaとのIF(インターフェース)仕様や、Visaが提供する特定のサービスに関する詳細な仕様理解です。これらはオープンな情報が少なく、事前の深掘りが困難であり、結果として業務を通して事後にキャッチアップせざるを得ませんでした。

Go言語

Go言語プログラミングエッセンス

詳解Go言語Webアプリケーション開発

Go言語については以前「プログラミング言語Go」で基礎を学んでいましたが、より実践的な知識と作法を身につけるため、さらに2冊の書籍で学びを深めました。

入社して感じた組織文化

入社して感じたことは「みんなのレスポンスが早い。みんなが助けてくれる」です。

特に印象的だったのは入社した週のことです。ちょうどApple Pay による Visaのタッチ決済のリリース直後でした。 Slackで「どなたか知っている人がいたら教えて下さい」と質問をしたところ、多忙なはずのVisaのタッチ決済の担当者が即座にレスポンスをくれ、問題解決へ導いてくれました。

その他にも日々皆さんの相互扶助の意識を感じ取ることができる出来事があります。

・部門横断的なタスクが発生した際、「この部分は田中さんのキャッチアップに最適かもしれません」と声をあげてタスクのアサインを提案してくれた方がいました。

・私にとって初めてのタスクにアサインされた際は、私が担当と決まった1分後には関連する参考資料や過去の議事録へのリンクをアドバイスとともに提供してくださる方がいました。

入社後に取り組んだこと

まずはやってみる

入社後は小さめの開発タスクをこなしながらキャッチアップを進めていきました。その中で意識したのは、「分からなくても自分が解決する」です。

自分のチームには決済関連の運用を行うチームなど他チームから日常的に問い合わせが来ます。これに対してチームに来た問い合わせは自分が解決するんだと考えて取り組みました。

最初は知識不足で質問の内容も分からず、見当外れな逆質問をすることもありましたが、それはもう仕方ないです。分からないからこそやって覚えるしかないと割り切って、積極的に取り組みました。

その結果、次第に勘所が分かってきて的確な対応をできるようになり、他チームの皆さんとの信頼関係も構築できたかなと思います。

チームの役目を果たしていく

次に意識したのはチームが受け持つタスクを問題なく実行していくことです。 Paymentチームはできたばかりですが既にやるべきことは沢山ありました。

それらについてリストアップした上で優先度の認識合わせをして、スケジュール的に自分が着手したほうが良いと考えるものを順に着手していきました。

特に印象深かったのは、Visaの仕様変更・機能追加への対応をリードしたことです。

定期的に発生するVisaの仕様変更・機能追加にKyashのシステムを対応させる必要があるのですが、スケジュール的に8月頭には対応方針を決める必要があると気付いたのは、7月の最終週でした。期限が迫る中、ひとまず英語で書かれた900ページ超の仕様書を読み込み、影響範囲を特定し、対応方針をチームで決めていきました。

プレッシャーも感じましたが、最終的には期限までに対応方針をまとめることができました。この時、策定した対応方針をレビューしてくれた社内の有識者に「完璧」と言ってもらえたのは「やれば何とかできるんだ」と自信になりました。

チームとしての成果を出していくために

現状、キャッチアップも進み、私個人としては決済担当としてやるべき仕事を問題なくこなせるようになりました。しかし、チーム全体としての持続的な成長という観点から見ると、いくつかの課題が明確に見えています。

現在のPaymentチームは、タスクを分担して個々人が責任を持って完遂するという形で成果を出しています。しかし、今後新しいメンバーが参画した際、このやり方だけで同様のアウトプットを維持できるかというと、不透明な部分があります。

例えばメンバーが入れ替わってもチームとして同じアウトプットが継続的に出せるように、今後はチームとしての仕組み化に力を入れていこうと考えています。

仲間を募集しています!

Kyashは、金融領域の厳密さと、ユーザー体験を追求する柔軟性を両立させる、挑戦しがいのある環境だと感じています。

特にPaymentチームは、堅牢で安定した決済機能を提供するという「守り」の部分と、より便利な決済機能をユーザーに提供していくという「攻め」の部分の要になるものだと考えています。 この両立は大変ですが、同時に大きなやりがいがあり、とても楽しいです!

このような役割を一緒に果たしていく仲間を募集中です!私と同じように、新たな領域に挑戦したい方や、金融と技術の融合に興味がある方は、ぜひご連絡下さい!

「興味はあるけど自分には何ができるんだろ?」と迷われる方は以下の求人一覧にある「オープンポジション」から登録して下さい。

Kyash求人一覧: https://herp.careers/v1/kyash

「気になるので軽く話を聞いてみたい」という方は気軽にXのDMで声をかけて頂ければと思います!

Kyashのローン機能 "スポットマネー" の開発の裏側を話す Kyash Tech Talk をやります

Kyash の @konifar です。

2025年9月30日 (火) 19時から Kyash TechTalk #8 - スポットマネー開発の裏側 というイベントを 青山一丁目駅直通 Kyash オフィス & YouTube Liveオンライン配信 でやります。

手前味噌ながら面白い内容だと思うので、チョットしっかりめに告知します。

kyash.connpass.com

続きを読む

KyashのBtoB新事業 - 前編 - 法人送金の課題と我々が提供する価値について

株式会社Kyash法人送金事業部でリードエンジニアをしている北山です。

Kyashでは2015年の創業以来、支払いやお金の管理を簡単にするスマホアプリとそれに紐づくVisaプリペイドカードの提供を行ってきました。
表向きにはKyash = スマホアプリの会社としての顔が強いと思います。 しかし、実は2021年からKyashアプリ向けの企業送金ビジネスを行なっており、2024年1月からは銀行口座向けの送金ビジネスを開始していました。(以後、法人送金サービスと呼称します) 今回はサービス立ち上げ初期からエンジニアとして働く私が法人送金サービスの今をお伝えします。

法人送金サービス概要

法人送金サービスでは顧客企業に対して、Kyashアプリへの送金と銀行口座への送金の2種類を提供しています。

どちらの送金指示もAPIまたはWeb上の管理画面を通じて行うことが可能です。 そのため、顧客企業の事業規模やユースケースに沿った送金体験を提供できます。 今回は銀行口座への送金(法人送金)に絞って、その課題と我々が提供する価値について説明します。

法人送金の課題と価値

なぜ企業が直接行える銀行送金をわざわざ代行するこのようなビジネスが成り立つのか? そこには銀行の送金手数料が関わってきます。 法人が銀行振込を行う際、どの銀行口座に振込を行うかによって手数料が変わります。 法人の送金元銀行と同じ銀行に送金する場合は、一般的に安い送金手数料で済みます。しかし、他の銀行に送金する場合は全国銀行資金決済ネットワークと呼ばれるシステムとの連携が必要となるため、その分銀行でもコストがかかり、一般的に高い送金手数料が必要となります。 これらの送金手数料は送金元である法人側が負担しています。

中には複数の銀行と契約を結び、振込先によって送金元銀行を選択して送金手数料を抑えようとしている企業もあります。

このような企業が直接銀行を利用する振込業務には以下の課題があります。

  • 年間の送金に数百万、数千万円という規模間で手数料がかかっている。
  • 振込先銀行が多くなると、それぞれの銀行のフォーマットに合わせたファイルを用意する必要があるなど、各銀行ごとにオペレーションを変える必要が出てくる。
  • 目視による確認など業務負荷や人為的ミスのリスクが大きい。
  • 銀行ごとに手数料が異なるので送金手数料の総額計算が煩雑

こういった課題を解決するのが弊社の法人送金サービスです。(LPサイト)

  • 初期費用0円
  • 振込手数料の削減
    • 送金する分のみ手数料が発生
  • 原則24時間365日、即時送金可能
    • 銀行が稼働していない土日祝/夜間も対応可能
  • 使いやすい管理画面
    • シンプルなデザイン
    • 予約送金や承認機能
    • 人為的なミスを防ぐバリデーション機能
  • 選べる送金フォーマット
    • APIかファイルアップロードから選択可能
    • 全銀フォーマットと呼ばれる銀行送金で使われる従来のフォーマットにも対応

なぜ送金コストを下げられるのか

法人送金サービスを導入していただくことで、我々は送金件数をまとめて、スケールさせることができます。 我々は、多数の送金件数を確保したい銀行に対して1件あたりの送金単価を下げる交渉をすることができます。 こうして、送金件数を上げつつ送金手数料を下げてビジネスをスケールすることができるのです。

送金1件あたりの利益は数十円と微々たるものですが、法人送金というのは毎月数十万件と安定して行われることから長い目で見ると安定した利益となっていきます。

また、スケールメリット以外にも送金原価を低減できる仕組みを合わせて構築しており(詳しくは企業秘密)、これによって我々は顧客企業が各銀行へ払う振込手数料よりも安い値段で銀行振込のサービスを提供できています。

techとしての面白さ

特にスタートアップフェーズでは、ビジネスの成長スピードに開発体制が追いつかない場面も多く、「限られた人数・時間で、いかに堅牢で伸びしろのあるシステムをつくるか」という意思決定が常に求められます。

たとえば、送金のような金融系の機能では、障害を絶対に起こしてはいけない一方で、新しいビジネス要件や外部連携への対応が日々生まれてきます。このような環境下では、アーキテクチャや設計の「ちょうどいい抽象化」が非常に重要になります。仕様の粒度や責務の切り方、エラーハンドリングの基準ひとつ取っても、プロダクトの将来性に大きな差が出るため、技術的な判断の醍醐味があります。

また、顧客からのフィードバックがダイレクトに届く点も、このプロダクトの面白さのひとつです。現場のニーズを知ることができる一方、それらをすべて鵜呑みにすると機能が肥大化し、結果として使いづらいサービスになってしまいます。そこで我々は、個別の要望の裏にある共通の課題を読み解き、それを汎用的な仕様としてどう落とし込むかをチームで議論します。この「抽象化と統合」のプロセスがとてもクリエイティブで、エンジニアリングとしてやりがいを感じる部分です。

このように、法人送金サービスの開発は、「安定性」と「変化への対応」、「要望対応」と「プロダクトとしての一貫性」といった相反する価値を技術でどう両立させるかを日々考えながら取り組む仕事です。単にコードを書くこと以上に、技術の使い方そのものを問われる、奥深い領域だと感じています。

小さなチームだからこその意思決定スピードと裁量

当社の開発チームは少数精鋭で、1人ひとりの裁量が大きいのが特徴です。システムの仕様検討から技術選定、実装、リリース、運用までを一気通貫で担当するため、「プロダクトを作っている」という実感を強く持てます。

また、ビジネスサイドとの距離も近く、プロダクトに関する議論が日常的に行われています。ユーザーの声や数字を見ながら改善サイクルを回せるのも、エンジニアにとって大きな魅力です。

最後に

法人向けのサービスというと「堅い」「地味」と思われがちかもしれませんが、限られたリソースの中で、堅牢性と柔軟性のバランスを取りながらプロダクトを磨いていくという点で、むしろエンジニアリングの本質が問われる領域だと感じています。 「顧客の課題に真摯に向き合いながら、技術で価値を届けたい」という方にとっては、きっと面白い環境だと思います。

法人送金事業に興味のある方は、こにふぁーまたは北山のXアカウントにDMをいただくか ↓こちらからご応募ください。感想もお待ちしています。 https://herp.careers/v1/kyash/Zjvd6Kfo-h-i

後編では法人送金事業の未来像と求められるエンジニアの能力について書きます。 お楽しみに!

ランチ手当をKyashで支給する運用を始めました

Kyash では 2024年12月 からランチ手当の支給を始めました。

物理出社を必須にしているわけではありませんが、出社するならメンバー同士でコミュニケーションを取ってもらいたいというメッセージを込めて、10,000円/月を上限として出社1回につきランチ手当2,000円を支給しています。

支給は翌月にKyashの送金で実行しています。 自分たちのプロダクトで福利厚生の制度を運用できる のはなかなか体験がよいので紹介したいと思います。

続きを読む

ヴィジョンの真価

この記事は Kyash Advent Calendar 2024 の25日目の記事です。今年もKyashのアドベントカレンダーの締めくくりとして、この場を借りてエントリーさせていただきます。今回のテーマは、Kyashが創業当初から大切にしているヴィジョンについてです。

ヴィジョンとは何なのか

よく「あの起業家はヴィジョナリーだ」や「この会社にはヴィジョンがある」などと表現されることがあります。ヴィジョンがあることと、良いプロダクトや事業を作ることとはどのような関係があるのでしょうか。ヴィジョンは単なる理念やスローガンではなく、会社やプロダクトの方向性を形作る羅針盤であると思っています。私たちが日々の挑戦を通じて進むべき道を示すものです。いろんな文献などを見ても、ここまではよく書かれていると思います。ただし、これもいまいち抽象的でわかりづらいですね。 自分の解釈では、どのような世の中に貢献したいのか、どのように利用者の暮らしを良くできるのか、ということに対するスタンスだと考えています。 英語にはなりますが、この記事が自分は一番しっくりきています。 チームのベクトルともいうべきKyashのヴィジョンについてもう少し詳しく書いていきたいと思います。

Kyashのヴィジョン

Kyashのヴィジョンは、「新しいお金の文化を創る」です。 ミッションである「価値移動のインフラを創る」ことによって、お金と人間の関係を取り戻し、 新しい文化 ≒「常識」が生まれてくるところに貢献したい。 Kyashのミッションや創り出そうとしているモノについては以下の過去エントリーをご参照ください。

Kyashは個人向け(C事業)と法人向け(B事業)があります。 ここでは、創業来からコミットしている個人向け事業について、この「新しいお金の文化を創る」が意味するものを書いていきます。 これは遠大なヴィジョンですが、まず実現していきたいのは「人びとの経済的な豊かさに貢献する」ことです。英語では、「Contributing to users' financial well-being」になります。 日本では失われたX十年や給料が上がらない報道などをよく目にしますが、Kyashのサービスで利用者の所得を直接的に増やすことはできません。 Kyashは、利用者の日々のお金をコントロールしたり、アクセスしやすくすることを通じて、豊かさの実感に貢献したいと考えています。 興味深いことに、アメリカでは、このFinancial Well-beingを測る指標として、政府機関であるCFPB (Consumer Financial Protection Bureau)がFinancial Well-being Scoreというものを出しています。

https://www.consumerfinance.gov/consumer-tools/educator-tools/financial-well-being-resources/measure-and-score/

さらにこのスコアの要素が開示されており、これをKyashのビジョンを構成するものとして全社会議でも共有したことがあります。

Financial Well-beingの構成要素

ポイントは、利用者に「実感がある」ということ。「状態である」ことと、「実感があること」は似て非なるもので、 Kyashのプロダクト体験を設計する上で重要な視点になっています。

※ Kyashのヴィジョンに興味を持っていただいた方は、こちらのVision Deckもぜひご覧ください。

ヴィジョンの実現に向けて

上記で示した利用者の豊かさの実感に貢献するためには、決済領域のみでは役不足です。 Kyashは、自社のサービススコープを決済サービスではなく、ライフスタイルサービスと定義しており、 利用者の日々のお金の接点で貢献できる存在を目指しています。

従来は、下図で示す領域の金融サービスは、業態が分かれ、異なる法規制とアカウントの概念で提供されてきました。 そこでKyashは、利用者の日常に一通り必要なお金の接点をワンストップで提供することで、暮らしに利便をもたらすことを目指しています。

Kyashはライフスタイルサービス

例えば、Kyashが10月から提供を開始した「スポットマネー」も、Kyashのヴィジョンに基づく取り組みの一環です。ユーザーが日常的に抱える「お金が足りない」や「計画的に貯めたい」といった課題に対応する機能として設計されました。KyashのPM、デザイナーそしてエンジニアが体験にこだわって、ヴィジョンに基づく価値観をプロダクト上で表現してくれています。詳しくはこちら。 blog.kyash.co

ヴィジョンはWillドリブン、プロダクトは顧客起点でありたい

これまでヴィジョンについて書いてきました。ヴィジョンは、会社やチームが大切にするベクトル、利用者への働きかけ方。ヴィジョンは、利用者に答えを聞くことが難しい分、自社が何をしたいか、どのような世の中の変化の一部になりたいか、が根幹になります。他方で、その方針を誰に対してどのようなプロダクトを提供するか、というプロダクト戦略は、「マーケットイン」という考え方、つまり具体的なN1ニーズに基づいて設計を進めることが大切だと考えています。プロダクトアウトという概念は必ずしもマイナスな表現ではありませんが、ターゲット顧客やニーズの解像度が低いと誰のためでもないプロダクトが出来上がってしまいます。 冒頭に言及したように、ヴィジョンがあるから良いサービスや事業ができるとは限らないし、逆も然り。良いサービスと事業であっても、ヴィジョンがなければ場当たり的になり、中期的に取り組んでいくものが積み上げになりづらい。自分たちの存在意義を定義した上で、顧客起点で解像度を上げながらプロダクトを開発することがとても大切です。そして組織化が重要なスタートアップのフェーズでは、いかに優秀なチームと共に組織としての学習力を身につけられるかが勝負だと、日々の失敗を通じて痛感しています。

未来への展望

私たちのヴィジョンである「新しいお金の文化を創る」という使命は、これからも変わることはありません。むしろ、これまでの経験から学び、より強固なものへと進化させていきます。

これからのKyashは、さらに多様な金融ニーズに応えるプロダクトを展開しつつ、ユーザー一人ひとりが経済的な豊かさを実感できる世界を作り上げていきます。そして、このヴィジョンを共有するすべてのステークホルダーと共に、新しいお金の文化を育んでいきたいと思っています。

最後に、おかげさまでKyashは年明けで創業から10年になります。Kyashに関わってくださったすべてのメンバーやステークホルダーの皆様に心から感謝しています。とりわけ現在も第一線で奮闘しているKyashメンバー一人ひとりが、ヴィジョンの実現に向けて日々挑戦を重ねてくれていることに、改めて感謝の意を表します。

本年も、Kyashを大変お世話になりました。 これからもKyashをどうぞよろしくお願いいたします。

どうぞ素敵な新年をお迎えください!!