Kyashが目指す「価値移動のインフラ」の意義と未来

この記事は Kyash Advent Calendar 2023 の25日目の記事です。 例年と変わらずトリでKyash創業者の鷹取です。

振り返りと今年のテーマ

毎年この時期が来ると、この一年を振り返り、事業の計画とはまた少し異なる観点で次の一年に向けたビジョンをアップデートする機会が訪れます。Kyashは、これまでの実績をもとに、さらなる飛躍を目指しています。

今回は、Kyashの創業からのミッションでもあり、特に私たちが意識している「価値移動のインフラ」の意義について、掘り下げてみたいと思います。

価値移動のインフラ?

「価値移動のインフラ」とは、文字通り、お金を中心とした価値が世界中どこへでも、迅速かつ安全に移動できる仕組みのことです。これを「お金の高速道路」とも呼んだりしていますが、このようなインフラは、個人の生活やビジネスのあり方を根本から変える力を持っていると信じています。

それは、より公平で、アクセスしやすい金融サービスを提供することにより、全ての人々がその可能性を最大限に享受できる世界になっていくことだと思っていて、単なる決済システムの向上ではなく、社会全体の変革を意味します。

Kyashのアプローチ

Kyashは、ちょうど2年前に 法人送金サービスの提供を開始 しました。以降、menu様をはじめとして利用企業様にご利用いただいておりますが、利用企業やユーザーから「同様の仕組みで銀行口座へも振り込めるようにしてほしい」という要望を受けてきました。そこで、今年の8月にはKyashアプリ残高から銀行振込ができる機能をリリースしました。

そのようなタイミングの縁もあって、当初はもう少し先の未来に想定していたサービスではありますが、今後Kyashでは企業向けの銀行口座への振込機能を推進していく予定です。これは、Kyashのミッションでもある「価値移動のインフラを創る」にダイレクトな取り組みでもあり、今日はこの銀行口座宛に振込ができる法人送金サービスの意義や可能性について書きます。

日本の銀行振込事情

日本で銀行口座宛に送金を行う場合は、原則「全銀システム」を経由することが一般的です。原則8年毎に改修されるシステムで、つい最近までは障害なく50年にも及ぶ運用実績を誇っていました。創業期の2016年に海外の為替システムにおけるイノベーション全銀調査レポートに寄稿しましたが、欧米諸国では国内為替(内為)は単一システムに依存することなく、複数の選択肢が存在します。そして中には、米国のZelleのようにテクノロジー基盤をベンチャー企業が構築する事例もあります。

送金システム自体の堅牢性や柔軟性、互換性などは、個人・法人やニーズによって必要な水準が多様であることが背景にあると思います。本邦においても、少額送金用のサービスが存在しますが、従前の決済・送金システムの利用が続いている認識です。私自身も、2022年より「次世代資金決済システム検討ワーキンググループ」のメンバーとして、次期全銀システムの要件検討に関わらせてもらっております。

Kyashが為替で果たせる役割

Kyashは、デジタルウォレットを扱うサービスとして、銀行口座からのチャージ、銀行口座への振込、ユーザー自身の銀行口座への払出しなど、多岐にわたる銀行口座との為替を取り扱っています。当社全体の送金取り扱い件数や口座マネジメントの仕組みを生かすことで、企業様に対して全銀システムを介さずリアルタイムで安価な銀行振込を行えるのです。詳細な仕組みはここでは割愛しますが、C向けのウォレットを資金移動業者として従事してきたベースがあっての取り組みだと感じています。

ではどういう顧客やシーンで活用いただけるかというと、CtoCプラットフォームやシェアエコノミー系のサービス、日々相当な銀行振込を実施している業態の皆様や、各種精算(売上金の入金、返金、報酬支払など)を多く実施される企業様との親和性が高いと感じています。通常、企業の従業員向けの給与の支払いや企業の仕入れ・販売先に対する振込はお取引の深い銀行で取り組まれていることが多いと思います。銀行としても、与信取引上、重要取引先からの入出金を把握するのは大変重要なことです。

一方、当社が想定しているのは、そのようなバリューチェーン上のコーポレート取引の精算ではなく、どちらかというとサービスでユーザー宛に発生する小口の送金・精算のために活用いただくことを想定しています。

CSVや全銀フォーマット等、企業様が普段銀行振込をされているのと同じフォーマットでそのままご利用いただける環境を準備しています。ぜひ、詳しいサービスのご案内については私または当社のBizDev(biz@kyash.co)までお問い合わせいただけますと幸いです。

今後この基盤をしっかり育てていくことができれば、「ミニチュア全銀システム」のような存在として限定的に代替機能を果たす可能性があると思います。価値移動のインフラを目指す当社としては、銀行口座宛の送金に加えて、他の金融機関口座であったりKyashを含むウォレット等への入金が安価にリアルタイムに行えていけると、さらに意義が大きいと考えています。

最後に

Kyashは今年の前半、デジタル給与解禁の機運も受けて日本のフィンテック盛り上がりを期していましたが、センターピンを大きく変更する必要がありました。ロードマップの引き直しや順序の再検討などを行い、年内に新たな事業計画を策定しました。長らくKyashのTechチームを率いているVPoEや今年入社した事業責任者をリーダーシップチームに迎え、力を合わせて来年から新たな取り組みを力強く進めていきます!

今年11月には、50年(半世紀!)障害を起こさずに運用されてきた全銀システムで障害が発生しました。また国内の主要決済ネットワークでも障害が発生しました。確かに社会的インパクトが大きいシステム障害であったのは間違いありません。しかし、「管理が甘い」や「フィンテックなどの新興企業はさらに怖い」といった減点方式を続けていては、金融業界のイノベーションは険しくなる一方だと感じます。今後、「代替手段がないことがリスク」や「対価を払ってでも環境を整備する」という考え方が社会に根付いていくことを願いながら、来年も挑戦を続けていきたいと思います!

本年も、Kyashを大変お世話になりました。

メリークリスマス🎄また2024年も宜しくお願いいたします🎍