「いつものお支払いを2%お得に」から「いつものカードがもっと便利に」へ 〜 Kyashのマーケティング戦略〜

Kyashでマーケティングを担当しています上田 太暉です。

気づいた方もいると思いますが、7月18 日(木) にタグラインを「いつものお支払いを2%お得に」から「いつものカードがもっと便利に」に変更しました。またタグラインだけでなく、サービスサイトのデザイン、アプリの画面デザインも今回のタグラインの更新に沿ったデザインにアップデートされています。

今回の刷新は単なる表現の変更ではなく、Kyashのブランディングマーケティング戦略とも密接に関わっています。そこで、実際にタグラインを刷新するまでにどういったプロセスがあったか、そしてKyashはどういうプロダクトを目指すのかなどを記しておきます。 f:id:chihiro-hara:20190801111817p:plain

プロジェクト発足の背景

Kyashは2018年6月にリアルカードを発行すると同時に決済額の2%をキャッシュバックするインセンティブプログラムを開始し、「2%キャッシュバック」を訴求して多数のユーザーに支持をいただきました。それから1年ほど経過して決済サービスを提供する他社が高還元率を打ち出してユーザーを獲得するなど市場環境が変化するなか、Kyashはどういった価値を社会に提供していくのか、今一度検討する必要を感じました。

この課題に呼応するように、デザインチームを主体としたブランドプロジェクトが発足します。 こちらのプロジェクトの詳細は後日ブログでも紹介しますが、このプロジェクトにおいてマーケティングチームは「Kyashの機能要件定義」を担当することになりました。 機能要件定義とは、「どんなユーザーにKyashのどの機能に魅力を感じて使ってもらうかを定義する」といったイメージです。

「Kyashと市場とのズレ」の確認と是正、「新たなKyashの訴求軸」を明らかにすることを踏まえ、Kyashというプロダクトの再定義を開始しました。それが4月初旬でした。

プロジェクト始動

リサーチ外の普段のヒアリングやユーザー動向のモニタリング、そして実際の業務をするなかで、Kyashは「2%還元のカード」だけではなく、「Visa、Mastercardのクレジットカードやデビットカードを複数枚登録でき、それらのカードを併用することによって価値を発揮する」という機能も訴求できるポイントになるのではないかという仮説はプロジェクト開始前からありました。 この仮説も定量・定性両方から評価をすることを念頭に置きながら、マーケティングマネージャーと共に、本プロジェクトでは図のように進めて行くことにしました。

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リサーチフロー

そして、「”2%還元のカード”という訴求以外に、どういったユーザーに対して、現状ある機能のなかでどの機能を立たせる=USP*1とすることができるのかを把握し、タグラインと訴求軸に反映させることを本プロジェクトの目的としました。

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ミーティングの様子

インサイト分析

4月前半から6月初旬にかけて実施したインサイト分析は、以下のことを実施しました。

定量調査
・ユーザーの利用傾向のログ分析
・既存ユーザー向けのサーベイ実施
・潜在ユーザーへのサーベイ実施
SNS広告を用いたコンセプトテスト

●定性調査
・ ユーザーインタビュー

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リサーチ結果の一部

これらにより、次のことが明らかになりました。

  • Kyashのユーザーは、クレジットカードやデビットカードを複数枚所有しており、状況に応じてカードを使い分けて実際に利用している
  • チャージの際に、Kyashに登録したクレジット・デビットカードのポイントも貯めることができる
  • 利用意向が強いユーザーほど送金請求機能、リアルタイム通知やカードロック、カードの複数枚登録と切り替えなど、還元率以外の機能を強く支持している
  • Kyashはもはや「ウォレットアプリ」ではなく「カード」として認識されている

コミュニケーションプランニング

これらの結果から、総合的に判断して当初の仮説通りKyashにおけるUSPは、「複数枚のカードを登録できる機能」だと確認することができました。

当初の仮説に加えて、「Kyash Visaカードに自分が持っているカードを登録できる」というコア機能を軸にして、
・2%キャッシュバック
・送金請求機能
・リアルタイム通知
・セキュリティ
といった周辺機能が支持されているという関係性、そしてどの順番で好まれているかも確認することができました。

正直ここで仮説とは全く異なる結果が出なかったらどうしようかとかなり不安になりましたが、無事に想定していた通りの反応率が出た事が確認でき、内心ホッとしました。

最後に、調査の結果特定できた「カードに紐づけて使うカード」というメインの訴求軸を、「複数枚カードを使い分けているカードホルダー」というユーザー層に適切に伝えるために、タグラインの変更を開始します。

事前に調査結果を社内で共有したのち、アイデアは社内公募することにしました。公募するにあたって、提示したのは以下の5つのポイントです。
・簡単な日本語であること
・一瞬で価値が伝わること
・ブランドプリンシパル*2を意識すること
・ブランドに寄り過ぎずプロダクトの訴求を意識すること
・ターゲットを意識していること

どうしてもタグラインとなると、カッコつけた表現をしたくなってしまいますが、価値が伝わらなければ本末転倒なので、検討を開始する段階で前述の5つのポイントを明記しました。ブランドに寄り過ぎないとはそういう意味で明記しましたが、ダサくても伝わることが大事です!

公募で集まった約70コのアイディアを並べて社内品評会を行い、残った6つの案をさらにブラッシュアップさせたものがこれです。

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「いつものカードがもっと便利に」

プロダクトへ反映

そして、調査のアウトプットとデザイナーが定義したブランドを意識しながら、ユーザーの最初のタッチポイントであるサービスサイト、LP、広告クリエイティブや、アプリでの体験までマーケティング戦略に沿うようにデザインに反映させていきました。

・新しいタグラインの適用
・Kyashのプロダクト説明(ウォレットアプリと言わなくなった)
インサイト分析で明確になった機能表示の優先順位の適用

具体的なアウトプットはこちらをご覧ください! blog.kyash.co

すでにカードを持っている方たちへの訴求

改めて今回のタグラインに込めた想いを再掲したいと思います。

これまでKyashは2%キャッシュバックのVisaカードとして、Kyash単体で利用いただくような表現をしてきましたが、「既にクレジットカードやデビットカードを持っているならKyashと一緒に(もしくは「併せて」)使ったほうが良い、むしろ使わない理由はない!」というメッセージが伝わるように、コミュニケーションを改修しました。 多くのユーザーにKyashを利用いただくにあたって、いきなりキャッシュレスを押し出すのではなく、すでにカードを持っている方たちに寄り添うアプローチにしました。

これは「既にKyashを利用しているユーザーが、友人や同僚などにもっとKyashを紹介しやすくなるように」という考えもあります。

今後このアプローチが効果的であるかモニタリングと検証を行なっていきます。

次のフェーズではカードを持っていないユーザーに対しても決済手段としてのカードではなく、包括的な金融体験をサポートするチャレンジャーバンクというアプローチを実施していきたいと思っています。

価値あるプロダクトとして

還元率がフォーカスされやすい昨今において、「本当に使われるサービスは何か」を見つめてKyashはなぜ使われているのかを明らかにし、コミュニケーションやサービスの改修ができたことは良かったと思います。

決済市場を取り巻く環境は盛り上がりを見せていますが、キャッシュレスが社会に浸透していくなかで、Kyashはお得や単なる利便性ではなく、お金に関わる体験に価値を感じて利用していただけるプロダクトでありたいと考えています。 引き続き、市場との対話を続けながら、プロダクトをブラッシュアップさせていきます!

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プロジェクトチーム(左から上田, マーケティングマネージャー斎藤, PM 荒井)

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*1:Unique selling proposition:独自のセールスポイント

*2:詳細はこちら blog.kyash.co